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琥王は、俺を探しているのか、電車の中を見回していた。俺は、今日は隣に座った人物が大きかったので見えないのだろう。このまま、静かに眠っていたい。
紙袋を抱えて眠ろうとすると、同じ学校の制服で、ネクタイの色から同学年と思われるが、知らない奴が前に立っていた。
顔を確認したが、見覚えがない。でも、どこかで会ってきる気もしている。心臓の辺りが、ざわざわとする。
誰だったかな。目を閉じて、記憶を反芻してみる。自分の教室ではない、琥王の方には居たのだろうか。
知らないのか?知っているような気もする。そのまま眠っていると、声が聞こえていた。
「藤木だけど、忘れたの?」
藤木、いや、藤木は殺されてしまった。ならば、藤木と名乗る、前の人間は誰なのか。
そっと目を開くと、間近に琥王の顔があった。
「琥王?」
「おはよう。もう駅だよ、いつもは目覚めるのに、今日は起きないから、心配して起こそうとしていたところ」
では夢であったのか。
「……目覚めが悪い……」
俺と間違われて、藤木は攫われ殺されてしまった。
駅の改札を抜けると、学校まで歩く。線路添いを歩き、住宅街の中を突っ切る。静かに歩けと言われているが、結構、賑やかな通学路であった。
「薬師神、次の仕事は決めたのか?」
俺は、えんきり屋で人探しもしている。俺が居候している塩冶の母親は、どこかの教祖のようで、そこに集まる行方不明者の捜索願いを、俺は引き受けていた。
「遠視で分かるのは回答している。けど、気になるのがあってさ……」
俺は、神憑きで遠視、透視の能力がある。塩冶も遠視があるからこそ、俺に人探しを依頼しているのだろう。
住宅街の一件に、自宅の一部屋を店にしたような家がある。琥王はいつも、そこかコンビニで飲み物を購入する。今日は、住宅街のほうであった。
琥王が飲み物を購入している間に、俺は学校へと向かっている。
「薬師神、待て!」
学校は、目の前にある。犬の躾のように、待て!で、俺を呼ばないで欲しい。
「何を引き受けるの?」
自殺の恐れがあるものを、優先して探していた。気になっているものは、その優先順位は非常に低い。
「帰ったら、説明するよ。まあ、手紙だよ」
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