第1章

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 琥王は、俺を探しているのか、電車の中を見回していた。俺は、今日は隣に座った人物が大きかったので見えないのだろう。このまま、静かに眠っていたい。  紙袋を抱えて眠ろうとすると、同じ学校の制服で、ネクタイの色から同学年と思われるが、知らない奴が前に立っていた。  顔を確認したが、見覚えがない。でも、どこかで会ってきる気もしている。心臓の辺りが、ざわざわとする。  誰だったかな。目を閉じて、記憶を反芻してみる。自分の教室ではない、琥王の方には居たのだろうか。  知らないのか?知っているような気もする。そのまま眠っていると、声が聞こえていた。 「藤木だけど、忘れたの?」  藤木、いや、藤木は殺されてしまった。ならば、藤木と名乗る、前の人間は誰なのか。  そっと目を開くと、間近に琥王の顔があった。 「琥王?」 「おはよう。もう駅だよ、いつもは目覚めるのに、今日は起きないから、心配して起こそうとしていたところ」  では夢であったのか。 「……目覚めが悪い……」  俺と間違われて、藤木は攫われ殺されてしまった。  駅の改札を抜けると、学校まで歩く。線路添いを歩き、住宅街の中を突っ切る。静かに歩けと言われているが、結構、賑やかな通学路であった。 「薬師神、次の仕事は決めたのか?」  俺は、えんきり屋で人探しもしている。俺が居候している塩冶の母親は、どこかの教祖のようで、そこに集まる行方不明者の捜索願いを、俺は引き受けていた。 「遠視で分かるのは回答している。けど、気になるのがあってさ……」  俺は、神憑きで遠視、透視の能力がある。塩冶も遠視があるからこそ、俺に人探しを依頼しているのだろう。  住宅街の一件に、自宅の一部屋を店にしたような家がある。琥王はいつも、そこかコンビニで飲み物を購入する。今日は、住宅街のほうであった。  琥王が飲み物を購入している間に、俺は学校へと向かっている。 「薬師神、待て!」  学校は、目の前にある。犬の躾のように、待て!で、俺を呼ばないで欲しい。 「何を引き受けるの?」  自殺の恐れがあるものを、優先して探していた。気になっているものは、その優先順位は非常に低い。 「帰ったら、説明するよ。まあ、手紙だよ」
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