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窓を閉じようと近づき、外を見ると、やや海が荒れていた。
「ああ、土地の神と俺の相性が悪いのかな」
まるで、来るなと言っているようであった。
「行かないほうがいいのか?」
問い掛けてみると、風が止んでしまった。
「行けということか」
やや、がっかりして時計を見ると、まだ起きるには早かった。
「琥王は爆睡」
眠っている琥王を覗き込んでいると、琥王の手が伸びてきて、俺の背を包んでいた。
「起きているのか?いや、眠っている」
俺も、そのまま眠ってしまった。
目覚ましで起きてみると、驚いて口をパクパクさせている琥王のドアップがあった。
「どうして、薬師神がここに?俺、寝ぼけて運んだ?」
「それに近い」
俺がベッドから降りると、琥王は名残惜しそうに温もりを確認していた。
「さてと、島に行こうか」
晴天であった。
朝食を済ませ、再びレンタカーに荷物を積み込む。船はカーフェリーなので、車のまま移動できるという。カーフェリーと聞いて、多少は大きな船を想像してしまったが、船着き場にあったのは、車三台程度で終了という具合の小さなフェリーであった。
「これも、フェリーなのか……」
「うわあ、海、綺麗だ。薬師神、蟹がいる」
琥王を無視して船に乗り込むと、つい外の展望場に行ってしまった。芽実と、安廣は室内で優雅にコーヒーを飲んでいた。
土地には土地の神が存在している。それは普段の影響度は低いが、異なる神が来る場合は荒れる場合もある。琥王の厄病神のような、メジャーな神ならば、どこにでも分身がいるのでいいが、俺はマイナーであった。
「神憑きは歓迎されていないのか?」
琥王は、俺の見つめる先を確認していた。遠くに、薄っすらと島が見えている。このフェリーは、他の島に行く船で、依頼があった場合にのみ、途中下車をさせてくれるのだ。
「古い神だね、形も留めていないけど、ざわついている」
船が発進し、波は僅かに荒くなったが朝方よりは穏やかであった。
俺は、手すりに島の地図を広げてみた。この島は、不思議でもあった。
船着き場が、住居部分からかなり離れている。島自体が小さいので、どこに在っても不便は感じないのだろうが、船着き場の正反対の方向に住居があるのだ。
「住居部分は、浅瀬みたいだね」
浅瀬の方角に住居部分があったが、フェリーは入って来られなかったのか。
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