第1章

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 コンロ?は、マッチで火を付けるタイプなのだ。 第二章 波音の家  もうすぐ昼飯の時間であった。芽実を探すかと歩きは始めると、声が聞こえてきた。  石の積まれた低い塀は、風避けであろうか。 門を潜ると、芽実が笑顔でお婆さんと会話していた。  この方が祖母なのであろうか。俺が軽く会釈すると、芽実は手招きしてくれた。 「隣の家なのよ、ここ。うちの祖父母、留守みたいなのよ……」  芽実は周辺にも、土産を配っていたのだそうだ。 「安廣さんは?」  安廣の姿が見られなかった。 「医者と説明したら、集会所に連れていかれてしまったのよね。皆、医者に用があったみたいね」  安廣は小児科であろう。 「芽実さん、コンロの使い方を教えてください。昼飯を作ります」 「あらあら、それではウチで食べていきなさいな。土産もいただいたしね」  知らない家であるのに、食事を頂くというわけにもいかない。断ろうとしたら、後ろに居た琥王がいつの間にか、お婆さんを手伝っていた。 「山菜のおひたしに、お爺さん、どこかな」  庭に、呼ばれているお爺さんらしき人が居た。 「ここだ!畑で採ってきたよ」 「はい、今、料理しますからね」  お爺さん、山で会った人であった。  料理は素朴であったが、どれも新鮮でおいしい。遠慮もせずに食べてしまうと、溜息が聞こえてきた。やはり、かなり食べてしまったであろうか。 「……昔は、こんな食事でしたよね。出すと、全部無くなってね……今は二人でね、一回料理すると、三日も持ちそうでね」  この家の子供も、孫も、皆、都会で暮らしているのだそうだ。 「年に一回も帰って来ないよ……仕方がないよ、ここには仕事がない」  漁港らしきものはあるが、今は、自分達の食べる分しか漁をしていなかった。 「山菜、おいしいですね。少し苦くて」 「いや、こっちの木の実もいけるぞ」  何の実なのであろうか、ジャムを造ってみたいものだ。 「これ、俺の焼いたクッキーです。食事のお礼に貰ってください。この実、山で採れますか?」  季節があって、常備あるわけではなかった。しかし、冷凍にしてあるものを食べていて、自分達だけでは、多すぎるからと分けてくれた。 「琥王、これでジャムを造るぞ」  島には店はないが、一件、一般家庭のような家で多少の物が売っていた。 「砂糖」  売っている調味料が少ない。あとは洗剤の類しか売っていなかった。
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