第三章 樹神の森

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 ベランダの庭園に抜けたが、 そこで、風呂場の扉が破られていた。  ベランダに抜けてしまえば、 最悪は跳んで逃げるという手もある。 「何だ、この森は、どこだ、ここは?」  浴室で男が一人で騒いでいた。 ただの浴槽であって、他には何もない。 「マンションの中に、どうして森がある!」  男の幻想かと思っていたが、 男に飛び散った泥は、風呂場にないものであった。 服も時折、何かに引っかかり破れる。 しかし、空間に引っかかるものはない。 「どこだ!出て来い!」  男は確かに、森を見ていて、森の中を歩いているのだろう。 あちこちに躓き、転んで手を切っていた。
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