第三章 樹神の森

20/28
165人が本棚に入れています
本棚に追加
/228ページ
 俺は、風呂から出ると、急いでパジャマを着込み、 物音の方へと向かっていた。 そっとリビングを覗くと、 そこには、知らない男がナイフを持って立っていた。 「……見つけた」  笑って見えた歯が怖かった。目の焦点も合っていない。  風呂の方から来たので、玄関からは離れていた。 自分の部屋も、男の向こうであった。 塩冶の部屋に逃げこもうとすると、鍵がかかっていた。  風呂しかないか。 風呂場に走り込み、中から鍵をかける。 ドアを蹴り飛ばす音が、幾度も響いていた。  そんなに頑丈なドアではない。 蹴り破られる前に、浴室へと移動した。 浴槽の横にはドアがあり、ベランダの庭園へと抜けられる。 風呂が露天気分を味わえるようにと、 塩冶の好みで造られていた庭園であった。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!