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再び玄関で物音がしたが、
今度は、聞き慣れた塩冶の足音であった。
塩冶は、俺の部屋を見てから、風呂場へと進んでいた。
風呂場に来ては危ない。
「塩冶さん!風呂場に変な男が居るから、来てはいけない!」
俺の声に、男が俺の居るベランダを見た。
俺も男を見て、そこが、絵の中の樹神の森だと分かった。
泥土、光の射さない深い森。
「そんなところに、窓があったのか」
笑って、涎が流れていた。
「薬師神君!」
塩冶は、風呂場に入り、浴室の扉を開けた。
その時、男は水に溺れるように、沈み始めていた。
「うわあ、これは何だ。助けて!助けて!」
底なし沼のようであった。
その光景は、塩冶にも見えているようであった。
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