第一章 過去からの手紙

3/28
前へ
/228ページ
次へ
 車の運転をする桐生は、 えんきり屋の店主 塩冶 秀重(えんや ひでしげ)が ぬいぐるみから造ってしまった生命体で、今は塩冶の親友でもあった。 塩冶はかつて【返還の血】と呼ばれる、 無機から生命を造る能力を有していた。 今は、塩冶の力は、世界に戻している。  ぬいぐるみであった筈であるのに、桐生には可愛げもなく、 どこかサラリーマンにも見えた。 しかし、器用で、パンも一人で焼けるようになりそうであった。 「桐生さん、 パンを焼けるようになったら、えんきり屋で焼くのですか?」  桐生は、ちらりと俺の方を向いたが、運転に集中していた。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

165人が本棚に入れています
本棚に追加