ソーダ飴

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春の陽気の中、さらさらと風は流れていく。 ゴリッ。 口の中の飴玉を噛み潰す。色は水色だったか、ソーダ味だ。 妻の美沙との結婚の際に禁煙を決意して、今となっては立派な飴玉依存症となった。 「よう敬吾。久しぶりだな、2年ぶりくらいか」 背後から声を掛けられて振り向く。従兄弟の正樹だ。 髪は黒で短髪、眉毛が太くて彫りが深く、とても力強い顔をした従兄弟だ。 覇気のない俺とは正反対な従兄弟だ。 「おう、久しぶり。最近じゃ親戚の冠婚葬祭くらいでしか会ってないな。そっちは変わりないか?」 「ああ、こっちは相変わらず大したことない生活送ってるよ。それより、なんだ。今回は親父さん、残念だったな」 いつもシャキリとした正樹の言葉は、今日に限ってはしどろもどろとしていた。 「まあ、72まで生きたんだから大往生とまではいかないが、十分だったろう。最後までよくわからん親父だったが」 父親は先日他界した。1人で暮らしていた家で1人で逝ってしまったのだ。 「死因が餅を喉に詰まらせたっていうのが、なんともなぁ」 「全くだ。親戚中がなんとも言えない顔で挨拶してくるもんだから困ってる」 正樹もなんと言っていいのか分からないようで苦笑した。
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