ソーダ飴

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「最後に親父さんに会ったのっていつだ?」 「んん、一月前に美沙と家に行ったかな。部屋の掃除やらなんやらしに行った。特に何も喋りゃしなかったさ」 「親父さん、寡黙だったもんな」 寡黙、か。あれは寡黙と言うよりは、人と話すのが面倒だったのだろうと俺は思っている。 4年前に母親が他界した時でさえ、親父は多くを語らなかった。 ただ淡々と葬式を済ませ、毎日仏壇の前で何処かを見ていた。 俺も話好きというわけではない。美沙にも親父ともっと話せと言われたが、親父の「ああ」だか「そうか」という返答を思うと、話す意味があるのかわからなくなっていた。 そんな風にのうのうと過ごしてるうち、とうとう親父は逝ってしまった。 「でもやっぱり、親父さんが亡くなっちまったのはなんか寂しいな」 雲ひとつない空に何を探すでもなく目を向けている正樹が言った。 「まあな。人が死ぬってそういうもんだろ」 誰が死んだって空は変わらないし、飴玉の味だってそうだ。無常感のようなものが胸を過る。 「なあ、タバコ一本どうだ」 胸のポケットから出したタバコを正樹はこちらに差し出した。 自分のポケットの中の飴玉を軽く握る。 「いや、遠慮しとくよ。これあるしな」
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