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『莉緒。』
私の名を呼ぶ愛しい人の姿がそこにある。
「っ……せんせ…」
整わない息と額を濡らす汗
だけどそれ以上に心を掻き乱すその姿。
『卒業おめでとう。』
そう言って大きく広げる腕の中に私は躊躇なく走り込む。
「先生…会いたかった…ずっと会いたかった…!!!」
嗚咽に混じりながら出る言葉に先生は優しく答える。
『俺だって…どれだけこの日を待ちわびたか…』
言葉は優しいのにその腕に力が籠る。
「嘘!あたしが連絡したって何も言ってくれなかったくせに!
ずっと…ずっと!
……あたしがどんな思いで、どんなに我慢してたか…先生になんて分かんないよ!」
嬉しいのに…会えて嬉しいはずなのに口から溢れる言葉は先生を責め立てる。
『分かってる。莉緒がどれだけ我慢してきたか…ちゃんと分かってるよ。』
先生はそんな私を怒ることもなくキツく抱き締め私の頭を撫でた。
「もう…会えないと思ってた……卒業したらこの学校を離れて、先生との繋がりが無くなっちゃうんじゃないかって……」
『ったく。莉緒は俺との繋がりが学校だけだと思ってたのかよ。』
「違うの?」
『言ったろ?‘俺は莉緒と一緒にいたい、だからそうなる事は避けたい’って。
何処に居ようが、どれだけ離れていようが、ちゃんと繋がってるだろ…こことここで。』
そう言って首寄りの辺りの胸に手を当てられドキッとする。
「せっ…先生……」
『莉緒…』
胸元にあった手は私の頬に添えられ私の名を呼ぶと彼は優しく微笑む。
すると窓から吹き込む風にカーテンが揺れ、私たちを包み込んだ。
そして耳元で呟く
『愛してるよ、莉緒。』
私の唇にそっと柔らかな口付けが落とされた。
甘くて熱い柔らかな口付けを…
FIN
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