2人が本棚に入れています
本棚に追加
「カーーーーット!!」
大きな声が鳴り響いた。
張り詰めていた空気が、ふっと軽くなる。
あっという間に大勢のスタッフに囲まれ、男は一気に現実に引き戻される。
男はかけられた手錠をはずし、背丈ほどもあるダウンジャケットを受け取った。
同じくスカートを直しながら立ち上がった女にもダウンジャケットが渡される。
先ほどとは打って変わって柔らかな雰囲気をまとって、男は目を細めながら女に話しかけた。
「ねぇ、あのパンチ本気でしょ?」
まだ寒そうにしていた女は
けがれないような丸い目をこちらに向けた。
かと思うと、いたずらっ子のようにクシャっと笑い
「あの方がいい演技できたでしょ?」
そう言って、大人びた表情をのぞかせた。
最初のコメントを投稿しよう!