怪盗バレンタイン

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「カーーーーット!!」 大きな声が鳴り響いた。 張り詰めていた空気が、ふっと軽くなる。 あっという間に大勢のスタッフに囲まれ、男は一気に現実に引き戻される。 男はかけられた手錠をはずし、背丈ほどもあるダウンジャケットを受け取った。 同じくスカートを直しながら立ち上がった女にもダウンジャケットが渡される。 先ほどとは打って変わって柔らかな雰囲気をまとって、男は目を細めながら女に話しかけた。 「ねぇ、あのパンチ本気でしょ?」 まだ寒そうにしていた女は けがれないような丸い目をこちらに向けた。 かと思うと、いたずらっ子のようにクシャっと笑い 「あの方がいい演技できたでしょ?」 そう言って、大人びた表情をのぞかせた。
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