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女の百面相に、男が目を丸くしていると
女は、両手に握りしめていたピンクの塊に目を向け決心したように
軽く息を吐いた。
そして、それを男に見せながら尋ねた。
「これの中身、何か知ってた?」
「え?いや。小道具だから、発泡スチロールとか?」
適当に答えると、女は少しだけ微笑んで
それを男に差し出した。
「はい、どうぞ。あけてみて?」
ピンクのそれを受け取った男は、それが自分が予想したよりもズッシリと重みがあることに驚いた。
よく見ると、当たり前だが価値のあるお宝でも何でもなく、ピンクに光っていたのは少し高級そうな包み紙だった。
それを丁寧にはがすと今度は、ガチャガチャのカプセルより少し大きな透明の球体が出てくる。
球体の中にはうずら卵程の小さな茶色い玉がいくつも入っていて、それが重さの原因になっていたようだった。
男はようやく
その意味に気付く。
「これって…もしかして」
そう言って女を見ると
いつもよりも体を小さくして恥ずかしそうに頷き、顔を赤らめて小さくつぶやいた。
「…それ、あげる。」
それはかわいいバレンタインプレゼントだった。
「ありがとう。」
もう一度彼女の方を見ると、もうそこには女の姿はなく
遠くに彼女の歩幅の狭い足音が
かすかに響いていた。
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