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命がけで子孫を残そうとするセミが不規則に鳴く音を不快に感じながら、絶賛夏休み中の高校二年生、藤月誠は街中を歩いていた。
社会の役に立たないガキを閉じ込めておく牢獄、通称『学校』でもらう国語の教科書風に現在の状態をまとめてみる。
ここは公園だ。かなり大きい公園であり、遊具が多いことで有名な公園だ。しかし、今俺が大好きな子供の声やJKの声が聞こえないし、姿もない。
「暑い…」
下らない妄想でただでさえ少ない体内エネルギーを脳に使ってしまったことに激しく後悔する。いや、体内エネルギーって何だよってしばし自問自答し、やっぱり閑話休題。
「……うあー………。」
我ながら情けない声を出す。だがしかし、今日までの仮の宿であるボロアパートの一室に辿り着くには、歩いてあと40分はかかる。つまり、あと40分間。この灼熱地獄のような環境で歩き続けなければならないのだ。そりゃあ誰でもこうなるはず・・・だ。
そもそも、何故こんな環境なお外でお散歩中なのには理由がある。バイトだ。高校生になると同時にやっと許されるアルバイトである。始めるのは良い。しかし、とても辛かった。
アルバイト先の古本屋の先輩JKが、言葉に表すのも難しい失敗を4時間で両手の数ほど繰り返したのだ。さらに、当の本人はよくわからん理由で逃亡した。
おかげで、俺には壊れたエアコンや扇風機と一緒に残業3時間という、灼熱地獄の切符を渡されてしまった。そして、俺はリストラの4文字を店長から頂いたのだ。
…まあ、当初の目的は果たしたから良いのだが。まったくもって、厄日だなと思う。
「暑い…もう嫌だ……」
疲れた体を動かし、独り言を呟きながら手元の腕時計を見る。腕時計は午後3時45分を表示していた。見るとともに立ち止まり、誠は決心した。
休める場所を探そう、と。
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