起○○○

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 それは、いつからだったんだろう? 中学生になった頃から?  最初のうちはボンヤリとしか見えなくて気のせいだと思ってたから正確には憶えてないけど、気がついたら「人の背中に生えた翼が見える」ようになっていた。  わたしだけに備わっている特殊能力なのか、どうやら他の人には翼が見えないらしい。見えないから、誰もが自分の背中に翼があることを知らないまま普通に生活をしている。  わたしにしか見えない翼は、大きさも色も形も様々だった。  例えば、お父さんの翼は鷹のように大きくて自信に満ち溢れてて、仕事に出かけるときは力強く羽ばたいている。でも、接待ゴルフの朝は少し元気がない。本当はゴルフが上手なのに取引先を立てて手加減しなきゃいけないからかな?  お母さんの翼は白鳥のように美しく淑やかで、上機嫌のときなどは鼻歌に合わせて翼も踊るようにパタパタと動く。ちょっぴり臆病で、雷雨が通過するときは小さく閉じた翼がブルブルと震えていたりする。その人の感情がストレートに表れる翼は、犬や猫でいう尻尾みたいだ。
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