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「何があった?」
20分程、車が走った後。
不意に佐倉さんに聞かれる。
「何かあったんだろ?」
「……」
一瞬、話すのを躊躇い、私は黙った。
(佐倉さんに、社長のことを相談するのは違うよね)
でも、そうだと分かっていても、誰かに頼りたい気持ちと、佐倉さんと、この数時間一緒に過ごして芽生えた安心感に、私の唇は開いてしまった。
「一昨日の夜、東条社長と会って……言われたんです。お互いに、深く知ろうとしないこと……って」
「……」
佐倉さんは、無言で聞いている。
「私には、あまり関わりたくないって……そう聞こえて……。どうしていいか、私分からな……」
そこまで言いかけた時、佐倉さんの低い声が静かに響いた。
「……フザケんな」
「えっ?」
彼は、乱暴にハンドルを切ると、海に面した小さなパーキングに車を止める。
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