5piece 見えない本心

15/39
前へ
/39ページ
次へ
「何があった?」 20分程、車が走った後。 不意に佐倉さんに聞かれる。 「何かあったんだろ?」 「……」 一瞬、話すのを躊躇い、私は黙った。 (佐倉さんに、社長のことを相談するのは違うよね) でも、そうだと分かっていても、誰かに頼りたい気持ちと、佐倉さんと、この数時間一緒に過ごして芽生えた安心感に、私の唇は開いてしまった。 「一昨日の夜、東条社長と会って……言われたんです。お互いに、深く知ろうとしないこと……って」 「……」 佐倉さんは、無言で聞いている。 「私には、あまり関わりたくないって……そう聞こえて……。どうしていいか、私分からな……」 そこまで言いかけた時、佐倉さんの低い声が静かに響いた。 「……フザケんな」 「えっ?」 彼は、乱暴にハンドルを切ると、海に面した小さなパーキングに車を止める。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

243人が本棚に入れています
本棚に追加