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「あの……佐倉、さん?」
押し黙ったままの彼の方を見ると、怒りを滲ませた目をしていた。
「深く知るなって……『割りきって付き合え』って意味じゃないかよ!」
私の中で、モヤモヤしていた疑問を佐倉さんが、はっきりと口にする。
「お前、そうまでして、アイツと付き合いたいか?」
「……」
何を言っていいか分からず、うつ向いていると、不意に彼の腕が伸びてきて、私の肩に乗った。
「もう気づいてると思うけど」
佐倉さんの瞳が真っ直ぐ私を捉える。
「綾瀬。お前のことが好きだ」
そう言って、彼は私を引き寄せた。
「今すぐに、アイツから、お前を奪いたいくらい好きだ」
彼の顔が、近づいてきて……鼻先が触れ合うくらいの距離になる。
(佐倉さん……)
鼓動が早鐘を打って、顔が熱を帯びた。
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