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だけど、ゆっくりと閉じかけた瞼の奥に。
闇色の瞳が、思い浮かぶ。
感情の見えない、切れるような冷たい目。
それなのに……。
私の心は、まだ、その夜のような瞳に捕らわれたまま……。
佐倉さんの唇が、私の唇に重なる瞬間に、私は顔を背けてしまった。
「……」
佐倉さんの動きが、ぴたりと止まる。
「……ごめんなさい」
彼に対して、申し訳ない気持ちになって、思わず謝った。
「……オレこそ、悪かった」
そう言うと、佐倉さんの体が私から離れていく。
彼は車のエンジンをかけた。
「まだ早いけど……今日は、もう戻ろう」
そして、私達を乗せた車は、また海沿いの道を走り出す。
二時間程して、車が、私の家の側まで戻ってきた。
私はシートベルトを外すと、佐倉さんの方に向かって頭を下げる。
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