5piece 見えない本心

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「今日は、ありがとうございました。それから、ごめんなさ……」 謝りかけた私の言葉を佐倉さんが塞いだ。 「謝らなくていい」 「……」 「謝らなくていいから、来週の土曜日空けておいて」 顔を上げて、佐倉さんを見る。 彼の瞳が、真っ直ぐ私を捉えていた。 「それじゃあ、また会社で」 「はい、また……」 私は、助手席のドアを開けると、車を降りる。 佐倉さんの瞳が少しだけ私を見つめた後、シルバーの車は去って行った。 家に戻ると、ちょうどお母さんが門の側に立っている。 「結衣、お帰り。早かったのね」 「うん」 「それはそうと知らなかったわ」 「何が?」 聞き返す私に、お母さんがにっこりと笑って言った。 「彼氏いたのね」 「え?いや、あれは違……」 「いい人そうじゃない」 誤解したまま、家に入っていくお母さんを見ながら、私は複雑な思いで、小さくため息をついた。
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