243人が本棚に入れています
本棚に追加
(分からない……)
顔を上げると、熱いシャワーが瞼や頬に降り注ぐ。
肌は体温を上げていくのに、いつまでも体の芯が冷えきっているような……そんな感覚を覚えた。
濡れた長い髪を両手で掻きあげる。
あれから、東条社長に、自宅の最寄り駅の近くまで車で送ってもらって別れた。
表情が強ばっていた私と違い、彼の表情は別れるその時まで全く変わらなかった。
(どうして……?)
シャワーの音を聞きながら、心の中で、もう何度繰り返したか分からない疑問を繰り返す。
私はシャワーを止めると、浴室を出た。
バスタオルを頭から掛けて、洗面台の鏡に映った自分を見つめる。
今夜のデートが始まる頃の嬉しそうな顔とは正反対の、ひどく戸惑う顔が、そこにはあった。
最初のコメントを投稿しよう!