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「ん~、本命はないなぁ。でも、この人には、ちょっといいのとか。あの人には、1ランク上とか。それぞれランクはあるわよ」
菜々美のサバサバした言い方に、胸の奥が、小さく軋む。
「何で、そんなに割りきれるの?」
「結衣……?」
思わず出た言葉に、菜々美が驚いた。
そう……菜々美に当たるのは間違ってる。
だけど。
「そんな恋愛って、楽しい?」
「……結衣」
アーモンド型の綺麗な菜々美の目が、揺らいでいるのに気づいて、私はハッとする。
「ご、ごめん……」
彼女に謝った時、斜め向こうのデスクの椅子が引かれる音がした。
「おはよ。綾瀬、白石」
声の方に視線を向けると、スーツ姿の佐倉さんが出社してきた。
「おはようございます……」
挨拶をしながら、昨日、重なりかけた彼の唇を思い出して、私は小さくうつ向く。
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