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「何を騒いでいる」
その声の後、ドアが開いて。
東条社長が出てきた。
「……」
私と佐倉さんを見て、一瞬、社長の瞳が揺らいだけど、すぐに冷静な色を取り戻し、葵さんに視線を移す。
「葵。来客の準備を」
それだけ言うと、東条社長は、また部屋に戻って行った。
葵さんは、小さくため息をつくと、佐倉さんを見る。
「これから他社の重役が来るの。個人的なことで、ここで騒いでる場合じゃないのよ」
葵さんの言葉に、佐倉さんは私の肩から両手を下ろすと、無言で、その場を後にした。
「佐倉さん!」
彼の後を追って、エレベーターの前に立つ。
「私のことで、ここに来てくれたんですよね?」
「……」
「本当に、ごめんなさい……。私のことで、こんな風にさせちゃって」
相変わらず、佐倉さんは無言のままだったけど、エレベーターが到着した。
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