243人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
(何だろう……)
いつもクールではあるけど、切れるような冷たさだったな。
やっぱり社長室の前で騒いだから、怒ってるんだよね……。
私は、ため息を一つ吐いた。
2月の終わりの夕暮れは、まだほんの少しだけ肌寒い。
コートの要らない春は、もう少しだけ先だ。
会社の最寄り駅から電車に乗って、乗り換えの駅に着いた頃、スマホのバイブが振るえる。
(東条社長?)
でも、バッグから取り出して、スマホを確認すると、佐倉さんだった。
「さっきは頭に血が昇って、ガキみたいな行動した」
そう言った後、悪かったな、と彼は小さく謝る。
「私こそ、ごめんなさい。佐倉さんを巻き込んで……」
「だけど。それだけ真剣ってことだから」
「……!」
「じゃあ、またな」
そして、佐倉さんからの電話は切れた。
最初のコメントを投稿しよう!