5piece 見えない本心

27/39

243人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
(何だろう……) いつもクールではあるけど、切れるような冷たさだったな。 やっぱり社長室の前で騒いだから、怒ってるんだよね……。 私は、ため息を一つ吐いた。 2月の終わりの夕暮れは、まだほんの少しだけ肌寒い。 コートの要らない春は、もう少しだけ先だ。 会社の最寄り駅から電車に乗って、乗り換えの駅に着いた頃、スマホのバイブが振るえる。 (東条社長?) でも、バッグから取り出して、スマホを確認すると、佐倉さんだった。 「さっきは頭に血が昇って、ガキみたいな行動した」 そう言った後、悪かったな、と彼は小さく謝る。 「私こそ、ごめんなさい。佐倉さんを巻き込んで……」 「だけど。それだけ真剣ってことだから」 「……!」 「じゃあ、またな」 そして、佐倉さんからの電話は切れた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

243人が本棚に入れています
本棚に追加