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家着を着ると、濡れた髪も乾かさないまま、洗面所を出て、2階の自分の部屋に行く。
そして、ベッドの上に倒れた。
スプリングが、体を何度か押し返す。
布団に顔を埋めた。
『好きになりました』
低くて甘い声が、記憶の中で再生される。
だけど、あの後言われたのは、予想しない言葉だった。
「これからも、こんな夜を二人で過ごすために、守って欲しい約束が一つだけあります」
「……約束?」
不意に言われて戸惑う私に、東条社長は言った。
「それは、お互いを深く知ろうとしないこと」
「……!」
驚いて言葉を失う私。
「簡単なルールでしょう?」
そう言った彼の表情は、どこか無機質で、感情が見えなかった。
……深く知ろうとしないって、どういう意味?
必要以上に踏み込むなっていうこと?
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