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そして、金曜日。
「お先に失礼します」
夕方の6時半過ぎ、私は挨拶をして、退社する。
今日のお昼頃、社長から、また電話があって、遅くなるだろうから、ご飯を済ませておいた方がいいと言われた。
「どこで食べよう?」
街を歩きながら迷った後、私は、前から気になっていたけど、まだ一度も入ったことがない洋食のお店に入ってみることにした。
店内は程よく照明を落としていて、オレンジがかった明かりが、どこか優しい。
店員に案内された席に座り、注文をしてから、手を洗おうと化粧室のある店内奥へ向かっていると。
「あ……」
一番奥のテーブルに、佐倉さんと菜々美が座っているのに気付いた。
「菜々……」
二人に声を掛けようとしたけど。
「何で、お前、綾瀬を止めないんだよ?」
怒りを含んだ佐倉さんの声に、言葉を飲み込んでしまう。
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