5piece 見えない本心

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  そして、金曜日。 「お先に失礼します」 夕方の6時半過ぎ、私は挨拶をして、退社する。 今日のお昼頃、社長から、また電話があって、遅くなるだろうから、ご飯を済ませておいた方がいいと言われた。 「どこで食べよう?」 街を歩きながら迷った後、私は、前から気になっていたけど、まだ一度も入ったことがない洋食のお店に入ってみることにした。 店内は程よく照明を落としていて、オレンジがかった明かりが、どこか優しい。 店員に案内された席に座り、注文をしてから、手を洗おうと化粧室のある店内奥へ向かっていると。 「あ……」 一番奥のテーブルに、佐倉さんと菜々美が座っているのに気付いた。 「菜々……」 二人に声を掛けようとしたけど。 「何で、お前、綾瀬を止めないんだよ?」 怒りを含んだ佐倉さんの声に、言葉を飲み込んでしまう。
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