第7章:開いた小箱

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 付き合ってきたこれまでの間、サプライズだとか演出だとか、そういう類をしたこともされたこともなかった。  甘い空気というものがどこか苦手な私たちは、意識して避けていた部分もあるかもしれない。  年月を重ねるうちに、今更照れくさいという感情もプラスされて。  そんな悠貴が用意した、ふたりの未来を繋ぐ小箱の中に書かれていた言葉。 『一緒に買いに行こう』  シンプルで、悠貴らしい。  悠貴らしいと、率直に思った。  私がこれを開けること自体、それまでの考えを覆す覚悟を決めたという意味だ。  それを誰より知っている悠貴は、この箱を用意する際にすら私を縛るようなことはしなかった。  一緒に。ふたりで。  悠貴と私が未来を考えた時に自然と出てきた言葉が重なっていたことが、単純に嬉しい。 「葵」 「ん?」 「明日お前仕事だろ」 「うん」 「寝るか」 「うん」  何気ないこんな会話を毎日続けていく。  そんな未来も、悪くないかもしれない。  一緒に。  ふたりで、考えながら生きてみようと思った。 【しなきゃいけませんか。】完
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