第7章:開いた小箱

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「食事中に髪とか触んないの」 「かわいくねーのー」 「今更でしょ」 「そういうとこが可愛いんだけどな」 「ぶっ」  フォークで巻き込んで口に運んでいたパスタを吹き出しそうになるのをぐっと堪えた。  何、何なの。  何だか今日の悠貴は甘いぞ。  改めてパスタを巻き直していても、目の前から視線を感じる。  視線を感じるという感覚は言葉では説明できないし、実際自分で体験しない限りピンとこない感覚ではあるが、それでもやはり感じる。  具体的に言えば、明らかにニヤついた悠貴の視線。 「………」 「何で黙るー?」 「悠貴が見てるから」 「見てちゃダメ?」 「……だって」 「んー?」 「だって、なんか今日の悠貴さ」  そこで顔を上げると、ばっちり視線が合った。  ニヤついていると思った顔はとても優しそうに微笑んでいて、あまりに予想外で、あまりに優しそうで、何かもう何言っているのかわからないけれどとにかく頭の中がぐるぐるしてしまい一瞬で顔が熱くなる。
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