第7章:開いた小箱

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「そうだ、枡岡さんそんなに浮かれてたの?」    この部屋のテーブルによく似合う生ハムパスタとサラダを作ってあった悠貴が向かいに座ると、一番聞きたかったことを口にする。    ずっと気になっていたのだ、どう浮かれていたのかが。  フォークでパスタを巻きつけていた悠貴というと、訊ねられた途端に笑い出した。 「なになに、そんなにわかりやすい感じだったの?」 「そりゃもう!浮かれてるっていうか何かもうソワソワしててさ。特に昼が終わったくらいから。仕事まとめる早さも半端じゃなかったし。あんな枡岡さん初めて見た」 「そうかぁ……」  思わずにんまりしてしまう。  妻に花束を手渡していた時の、ぶっきらぼうなあの様子を思い出す。 「葵の話も聞きたかったんだよ。どうだった?花束」 「ものすっごい喜んで頂けたの。奥様からもお礼を…枡岡さんなんてすごく綺麗なお辞儀までされちゃった」 「そっか。良かったな」  フォークを置いた手が私の頭に伸びて、ぽん、と置かれた。  ……暖かい。  同時に頬が熱くなっていくのを感じ、慌ててその手をシッシと追い払う。
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