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ある程度歴史のある高校の部室といい勝負かもしれない。
しかし、嫌いでもない。
階段を上り二階へ上がる。
全部で九部屋あるうちの一番奥。その古びたドアの鍵を晴己は慣れた手つきで開け中へ入ると、後ろ手でドアを閉める。
そして、やっと私へと向き直った。
ここへ辿りつくまでに何度か声を掛けたが勿論聞くはずもないどころか、こちらを振り向くことさえなかったことに気付く。
前髪に少し覆われてしまっているものの、その綺麗な目にじっと見つめられると身じろぎひとつできない。
視線だけで気圧されてしまい、じりじりと後ずさってしまう。
後ろはドアだから、動ける距離も全然ない。
「……何」
やっとのことで開いた唇は渇いている。
対峙する晴己の表情は変わらない。可愛らしい年下の男の子ではない。
「いい?」
声が艶を帯びている。
その言葉が何を意味するのかわかっている。
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