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上から屈みこむようにした晴己はどこか悲痛な声を上げる。
「紫さんどうしたのこれ」
「目立つ?」
「そんなことないけど……痛そうだよ」
「大丈夫、もう治ってるから」
「大丈夫に見えない……ちょっとちゃんと見せて」
自分に背を向けるよう晴己に言われ、私は向きを変えて改めてそこを見せる。
晴己の目には、背中の中央から左の肩甲骨にかけての大きな傷跡が映っているはずだ。彼の胸の内は息を飲んだ音でわかる。
「……紫さん、どうしたのマジで」
「やっぱ目立つ? 水着着れないかな」
「事故にでも遭った? 連絡なかったのって、入院とかしてたんじゃ」
「もう治ってるから大丈夫だよ」
「……少しは頼ってよ、俺の事」
背中越しの晴己が寂しそうに呟いた。
ごめんね、と心の中で呟き、それを見せないよう微笑んで振り向く。
「ありがと、晴己」
答える代わりに、彼の唇は優しく私の傷跡をなぞっていった。
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