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ぼんやりと開けた瞳に西日は眩しすぎて、思わず顔を背ける。
その拍子にパサ、と何かが床へ落ちた音がした。
「あ、起きた?」
声がした方へ向こうと片目を瞑り右手で陽射しを遮るようにして顔を向けると、「ごめん眩しかったね」とカーテンを閉めて微笑む晴己がいる。
その視線に気恥ずかしくなってしまい、胸を隠そうとしたところで気付いた。
きっちりとボタンが閉まったシャツを身に付けている。
そういえば、目を覚ました時に肌寒さをほんの少しも感じなかった。
「……着せてくれたの、シャツ」
「冬でもないし風邪はひかないだろうけど、一応ね。ジャケットはさすがに皺になっちゃうしあっちにあるよ」
「……ありがと」
「それに、傷が痛んだら可哀想だと思って」
「………」
「あっ別に目立たないんだけどね? 普段服着てれば見えないんだし。でもほら、俺は見えちゃうからさ、あんまり空気に触れると傷口いたんだりしちゃうのかなって思ってさ。ほら冷えると昔の傷が痛むとか聞いたことあるし」
黙ったことで私が傷を気にしていると思ったのか、晴己はペットボトルからコップにお茶を注ぐ作業を途中でやめ、慌ててフォローしようと支離滅裂なことを言いながら両手を宙で泳がせている。
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