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指先が微かに震えているのがわかる。
手のひらに汗が滲んできているのも、わかっている。
尋常じゃないほど緊張している。
じっと待っているのは、緊張する。
申し込みカウンターの向こう側に居るその人は、手元とこちらを交互に見やり確認すると微かに微笑んだ。
「はい、結構です。どうぞご利用ください」
縁のない眼鏡と、派手さのない控えめな茶色の髪をひとつにまとめた女性職員が会釈と微笑みで先を促す。
たった今この職員から返却された免許証を安堵のため息を吐いて財布に入れると同時に、利用願に記入した際に使用したボールペンをカウンターの端に置かれた素っ気ない筆入れに戻しながら、どうも、と微笑みで返して建物の奥へと歩き出した。
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