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「出てきてよかったの? 何か調べものとかあったんじゃない?」
「大丈夫、ちょっと時間つぶそうとしてただけだから」
「そ?」
「でも、どしたの? 紫さんが来るなんて珍しいね」
図書館を出た私たちは、肩を並べて歩き出す。
私より頭ひとつ分背が高く、明るい栗色に染めた髪を少し長めに伸ばしている彼は首筋が暑そうだ。
眉どころか目にまでかかっている前髪をもう少し短くしたら、綺麗な二重の目がもっとよく見えるのに。
……勿体ない。
そんなことを考えながらも視線はあまり合わさずに答える。
「んー、まあね。久しぶりに会いたいなーって思ってさ」
「紫さんが、俺に?」
「そんなとこ」
「へえ。そんなこともあるんだ」
可愛らしい顔に似合わない含み笑いをした彼の名は、由比晴己。
二つ年下のボーイフレンド。
ボーイフレンドだなんてどこか古い表現をするのは、恋人、という存在とはちょっと違うからだ。しかし友達というのとも違う。
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