第一章 後輩

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「何だよー」 「こんなとこで触んないで」 「ここじゃなかったらいいの?」  言うが早いが私の肩を抱いたと思うと、無理矢理右手方向へと歩みを進めはじめた。  背の高い相手にこうされると半ば引きずられるようになるので、慌てながらも自然とついて行ってしまう羽目になる。 「ちょっと、痛いってば」  当然ながら上げた抗議の声に耳を貸すことなく歩き続ける晴己の横顔は、とても綺麗だ。  真正面から見ると可愛らしい雰囲気に包まれた『かわいい後輩』なのに、こうして横から見るとスッとした鼻筋がとても好ましい。  ……今は見惚れてる場合でもないんだけど、と自嘲する。  講義棟をいくつも抜け、まるで隔離された離れのように経つサークル棟が見えた。  ここだけ建て直しがされていないらしく、明らかに他の棟より古い。  他の棟は新入生を集めるために近代的になっているのに、ここだけ時代に取り残されてしまったと言っていいほどに、とにかく古い。      
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