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「由比晴己。君は奔放な都築紫が許せなかった」
相良の声色が低くなる。
晴己と相良の間に―――正確には晴己寄りに立った私は、相良の顔を正面から見据えることになった。
見る人によっては「涼しげで綺麗な」、とも呼べるかもしれない。
私は少し苦手に感じているその切れ長の瞳はまっすぐ晴己に向かっていた。
しかし、相良の瞳に映っているのは晴己ではない。
静かに燃えているのは、相良の正義。
相良の中だけの、信条。
「そして深夜に彼女のマンション近辺で待ち伏せをした君は、帰宅した彼女に切りかかった。ほんの二か月半前の事です」
「違う!俺は」
「続きは署で聞きましょう。いいですね」
軽く振り上げた手と声で晴己を遮った相良は、確認するように一瞬私へと視線を投げつけてきた。
しかし、私ではない。
相良の瞳に映っているのは、晴己は勿論、私でもない。
「皆さん、出てきてください」
少しだけ張り上げた相良の声は、朝の公園によく響く。
あちらこちらからスーツ姿の男たちが現れた。
後ろの晴己が息をのむのがわかる。
当たり前だ。警察の人間が、六……いや、七人はいる。
私だってこんな光景、ドラマや映画でしか見たことがない。
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