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相良の後ろに控えた男たちと、一瞬視線が交わる。
全員とは言わないけれど、半分の顔は知っていた。事件当時に見たことのある刑事たちだ。
「では行きましょうか」
「いや、だから俺は何も知らないって」
「続きは署です。皆さん、彼を取り押えてください」
その言葉に、ひとりの刑事が半歩前へ踏み出す。
年の頃はもう四十を超えているはずだ。髪を短く刈り揃え、眉も太い。スーツはくたびれており、見るからに脚を使う『現場の』叩き上げといった風貌の男。
名は近藤という。
事件当時顔を合わせた時、身内の醜い言い争いを間近で見て私に一番気を使ってくれた刑事だった。
「……本当なのか」
その近藤が、確認するように低い声で問う。
―――そうか、彼だ。
瞬時に悟った私は、黙って頷いた。
「近藤警部補、早く彼を――――」
指図するため振り上げかけた相良の右手を、近藤が素早く上から掴んだ。
そこからは一瞬で、周囲の刑事たちは勿論相良本人でさえも呆気にとられたまま近藤は動いた。
相良の右手を掴んだまま親指方向へと捻りあげ、その右肩を左手で上から抑えこむ。そして、掴んだ右腕を上に引っ張り肩を下に押す。
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