6・心弾む時間

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「どうして謝るんですか。わたし、キスして 欲しかった。だから……」 「でも、やり過ぎだ。はなはまだ……」 「好きです」 抱きしめた腕を解きかけた俺の耳に、 聞きたくて堪らなかった言葉が 飛び込んでくる。 「直彦さんが好きです」 「はな……もう一度。もう一度言ってくれ」 「好きです」 自ら胸に抱き付いた、はなが繰り返す。 「やっとだ。はな……」 抱きしめる腕に、一層力が籠る。 顎を引き上げ、その言葉に感謝の意を込めて もう一度、今度は慎重に唇を重ねた。 はなが俺を好きだと、キスが欲しいと 言っている。 俺の長い長い片思いが今ようやく、 終わりを迎えたのだ。
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