五臓六腑に染み渡る

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 刹那、全ては少年の言う通りだと実感した。住んでいる場所も、勤めている会社も、そればかりか、愛する人も、憎んでいる人も、全ての記憶を一瞬で取り戻したのだ。見事としか言いようのないくらい鮮やかに。  憎っくき相手は、上司の高橋だ。40も後半に差し掛かっているのに、常に目をギラギラさせている。女癖が悪く、社内社外に関わらず女性を苦しめる女の敵。このご時世なのに取引先に接待を強要する。必ず若い女性社員を同行させるように注文をつける。あとは立場を利用してのセクハラとパワハラ三昧。胸を触る。尻を触る。そんなものに留まらない。服を脱げと言う。スーツを脱いでブラウスも脱がせて、スカートだって。  下着姿にさせられて、それでもまだ高橋は続けさせようとした。下着を指差して、また脱ぐものがあるだろうと言われ、さすがに女性は泣いてしまった。そんな女性を目の前にして、僕は見て見ぬふりが出来なかった。
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