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「……別れて欲しいの」
なのに瞳の口から突然告げられた内容に、ただただ呆然と立ち尽くした。
「どうして?」
「他に好きな人が出来た。ただそれだけ」
そんな理由は、まさに伝家の宝刀だ。何も言い返すことができず、僕は瞳の目の前から去るしか方法が浮かばなかった。
それから度々、週末に、街で高橋と腕を組む瞳の姿を目撃した。何故? どうして? 接待であそこまでのことをされたのに。涙だって流したのに。
女心は分からない。
そんな時、知ってしまった。高橋が瞳に圧力をかけたことを。噂の真偽は定かではない。でも、瞳が拒めば、取り引きを止めると脅されているという話だった。
高橋なら、あり得ない話ではない。もう限界だった。直の上司である高橋を殴って、会社を辞めてやろうとさえ考えていた。
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