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大きく息を吐き、空を見上げる。
選択肢は3つというが、第三者や、誰も選ばないという項目は、最初から排除してしまっていた。だから、ターゲットは、愛する人か憎い人か。その2つ。
瞳を刺すことなんてできっこない。そんな度胸もないし、こんなまどろっこしいことなんかに巻き込みたくもない。
冷静に考えれば、選択の余地なんてなかったのだ。
高橋ならば、躊躇なく刺す自信がある。高橋なら、どれだけ困ろうと知ったこっちゃない。
ただ心配事は、仕返しが来るのではないかということだ。胸に刺しても、死ぬわけではいと少年は言っていた。高橋なら、迷わず憎い奴を刺して、復帰することは間違いない。自分自身が一番可愛い人間だ。それ以外の選択肢は、選択肢ですらあり得ない。
そこに来て、自分を刺した人間の心当たりがないことに気づく。つまり、誰に刺されたかは分からないということだ。高橋を憎む人間なんて文字通り星の数ほどいるはずだ。
ならば、仕返しは考えなくていい。
そう僕は確信した。そうなってしまえば、もう何も気にすることはなかった。
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