44人が本棚に入れています
本棚に追加
やった。拍手喝采を上げる間もなく、僕は目が眩むような光に包まれた。
気づけば、職場とは違う場所にいた。病院だとすぐに分かった。体に戻れたのだ。
高橋は一体、どんな選択をするのか。憎い人間を刺すと決め付けていたのに、ここにきて急に不安になった。
万が一にでも高橋が瞳を刺してしまったらどうしよう。死ぬわけではない。しかし3つの選択肢を選び、行動に移さなければならなくなる。
その時、名案が一つ浮かんだ。今から48時間以上、高橋の知らない場所に瞳を逃がせばいいのだ。
「木下さん、大丈夫ですか?」
あれこれと考えていると、看護婦に名前を呼ばれた。ハッとして僕はうなずく。
「もう大丈夫です。退院させてください」
こんなことをしている場合ではない。時間がないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!