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それでも、これから簡単な診断があると言う。
悠々とそんな診断を受けている場合ではなかった。隙をついて僕は病院を飛び出した。建物を振り返れば、僕のアパートのある三鷹市の病院だ。風邪をこじらせたりして、何度か来たことがあるから分かる。
鞄を手にしていた。中を検めれば、財布もちゃんとしまわれている。
瞳の元へ行かなければならない。瞳はきっと会社にいる。逃げるように伝えるのだ。どこか遠くにいくように。
僕は必死に走った。一旦新宿に出て、小田急線に乗り換え、登戸で降りた。瞳の会社は駅から10分ほどの5階建てのビルの3階にある。階段を出てすぐのドア。躊躇うことなく中に入る。
「竹田さんいますか?」
「あれ? 木下さん」
取引先だ。僕の面も割れている。
「竹田でしたら……」
いち早く声をかけてくれた40代の女性が口ごもるのを見て、嫌な予感がした。
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