五臓六腑に染み渡る

24/30
前へ
/30ページ
次へ
「残念だったね」  背後には少年。 「どういうことだ。ナイフで刺したとしても、死なないんじゃないのか?」  嘘を付いてたんじゃないだろうな。僕は少年を睨みつけた。 「まさか。嘘なんて一切付いてないよ。もし、僕が嘘をついていたら、おじさんの刺した人は、死んじゃうことになるよね。だったら誰も刺せないでしょ。それに、刺されていきなり告別式もおかしくない?」  そうか。そう思って項垂れる。 「だったら、どうして瞳は死んだ?」 「それって、権利を使うっていう解釈で良い? 一つしかない権利だからね。後でしまったって思わない使い方してね」  少年はあくまでもニコニコとしていて、その笑みが今は憎くて仕方がない。 「なんでも良い。頼む……教えてくれ」  権利の有効活用なんて、今は微塵も考えられなかった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加