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「今は何かと思い出せないけど、じきに思い出せるようになるから、ご心配なく」
正に今、気にしていることを当てられ、心の中でギョッとする。それでも子供なんかになめられてたまるものかと虚勢を張った。そもそも言葉遣いがなっていない。タメ口だなんて許せない。
「そんなことはいいから、早く学校に行きなさい」
「あまり人を身なりで判断しない方がいいよ」
「目上の人への言葉遣いがなってないようだが」
「生まれてからの歳月なら、僕の方が長いんだけどね」
少年の冴えた眼光の鋭さに、不覚にも身震いを覚えた。すぐに、少年は破顔した。
「それより、移動して欲しいんだけど」
「どこに?」
「あっちの方に」
少年は、都庁を背にして、正面やや右を指差した。
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