雨の帰り道

2/2
前へ
/2ページ
次へ
「だって、雨降ってるし。傘一本しかないし。先にアタシの家に行ったら、後で傘返さなくちゃならないから面倒でしょ? これがベスト」  市川が、全然女の子っぽくない、ニカって感じの笑い方をする。その直後にもう一度、また明日と告げて背を向けた。  雨の中、傘に半分隠れた後ろ姿が遠ざかっていく。その時に気づいた。いつもはもう少し長く感じる家までの距離が゛今日はとても短く感じていたことに。  勝ち気で男勝り。さらに、とてつもないお喋りだということも判った。あと、かなりのお人好しでお節介だということも。  でも、むしろマイナスっぽい点が追加されたのに、俺の中の市川株が急上昇したのも判った。  明日からは、またただのクラスメイト。でも、もう少し仲良くなりたい気持ちが高まっているから、明日は今日のことを理由にして、俺から声をかけてみようと思った。 雨の帰り道…完
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加