雨の帰り道

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雨の帰り道

 急な天気の変化で、下駄箱についた時にはもう雨は降り出していた。  いつもの帰宅時間なら多分もう家にいる。だけど今日は、日直だという理由で担任に急な用事を押しつけられ、帰りが遅れてこのざまだ。  誰かの傘に入れてもらおうにも、とうにみんな帰ってる。そもそも雨が降ること自体、天気予報を裏切っているため、傘なんか持ってる奴はいなかっただろう。  仕方ない。走って帰るか。  そう思ったら、ふいに傘を差し出された。 「傘、入るでしょ」  振り向くと、そこにはクラスメイトの市川がいた。出席番号順に選ばれた男女ペアの日直。その相手だ。  見た目は悪くないけど、かなり勝ち気で男勝り。どちらかというと苦手。そういう相手なんだけど。 「アタシが持つと手が疲れるから、傘、石田が持って。その代わり、きちんと石田の家まで送るから」  勝手にどんどん話を決められる。でも雨足はかなり強くて、背に腹は代えられない状態だ。  結局言われるまま傘を持ち、一緒に帰ることになった。  道中は、市川の演説会のようなものだった。  まあ喋る。ともかく喋る。よく喋る。  なんてことを思っていたらあっという間に家に着いた。 「石田の家、ここなんだ。じゃ、また明日。傘、持ってくれてありがと」 「いや、こっちこそ、わざわざ入れてくれてありがとう」  お礼を言い合った時に、ふと気づいた。そういえば市川の家はどこなんだろう。 「市川って、家、どこ?」 「ウチ? ウチは……」  聞かされた場所に驚く。だってそこは学校を挟んだ反対側だ。  なのにここまで来てくれたのか?  そのことを口にすると、市川は、何でそんなことを言われるか判らないという顔をした。
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