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「んん~? お? どうした? こんな夜中に」
起きて来たじいちゃんの間延びした声が響く。目が合うと、いるのが俺だと判ったらしく、じいちゃんはそう話しかけてきた。
「じいちゃん、この、置き物…」
やっとのことでそれだを口にすると、じいちゃんはいつもの口調でだらしねぇなと笑った。
「おい。よく見ろ。お前らが今囲んでるのは、よくここに出入りしてる俺の孫ちゃんだぞ」
じいちゃんの冗談めいた言葉と共に、周囲の唸り声は一斉に止んだ。
「しかし、こんな時間にどうした? 何か、どうしても明日要り用な忘れ物でもしたのか?」
もう、唸りもしなければ寄って来ることもない犬達の置き物を縫うようにじいちゃんが寄って来る。その姿を見ながら俺はその場にへたり込んだ。
* * *
あれからも、俺は足繁くじいちゃんの家に通っている。だけど、もう二度と戸締りのことを口にはしていない。
この家に戸締りは必要ない。それを身を持って体験したからだ。
でも一つだけ。来るたび欠かさず口にする言葉がある。
「警察は、置き物が戦ってくれたなんて信じないから。泥棒相手だとしても、後でじいちゃんがあれこれ言われないよう、やりすぎにだけは気をつけてくれよな」
そう囁くたび、家中から、OK代わりの『わん』という返事が聞こえる。
番犬…完
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