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結論は「罪に問われることはない」だ。
別に死体が見えず、発見できないからなんて頓智(とんち)のきいたことを言いたいわけじゃない。
それは、その青年がすでに人間だと証明できなくなってしまっているためだ。
既に生命活動を停止した透明な人型の物体を人間だったと証言する手立てはない。
さらには青年が実験以前の心優しい善良な青年のままだったと言う証拠もない。
もしかしたら実験の副作用で精神が壊れたのかもしれない。
彼は、もう昔の彼ではなく「透明なナニか」なのかもしれない。
そんなあやふやな、憶測で青年は人間ではなくなったといえる。
殺人を目撃した他の研究員も口では責めるかもしれない。
この話を聞いた全くの部外者も罪を問うてくるかもしれない。
だが最後には「仕方がなかった」この一言で恐らく全てなかったことにされるだろう。
青年が研究にその身を捧げた心優しい善良な人間だという事実は変わらない。
しかし、ここまで「人間」としての人徳と証拠があるのにもかかわらず透明になったと言うだけで人は「人間」でなくなる。
外見的にも内面的にも人間のそれと同じなのにも関わらず人間とは言えない存在。
哲学的ゾンビならぬ
「哲学的透明人間」の誕生だ。
さあ、いい加減君の答えを聞かせてくれよ。
君は一体、何をもってして透明人間を透明な「人間」だと定義するんだい?
どうすれば「人間」であると証明することができると思っているんだい?
ほら、早く聞かせに来ておくれよ。
ずっと待っているからさ……。
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