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「――ただいまー」  たたたた、と遠くから足音。 「光(ミツ)兄ちゃん!」  冷たくなった鼻をすんっ、と鳴らしながら家に帰ってきた俺は乱雑にスニーカーを脱ぎすて、そのまま廊下に膝をつく。 そして買い物してきた袋と鞄を置いて、両手を広げる。 ほぼ毎日のようなこの習慣。 「ただいまさーん。栞(シオリ)――」  ――と、五歳になる妹のシオリは俺の胸に飛び込んで――否、追突してきた。  ぐふぅっ……シオリちゃん、ちょっと最近強い……っ。 「ミツ兄ちゃんおかえりさーん!」  俺の首にしがみついてシオリはハグする。 これがほぼ毎日のような習慣。 いってきます、と、ただいまの――俺が中学一年の時からずっとシオリにやってる習慣だ。  もう、五年になる。
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