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「今日も良い子にしてたか?」 「してた! 多分!」  にっこり笑うシオリの、多分、は気になるところだけれど、まぁ可愛いからいいや。 よっ、とシオリを抱っこしたまま買い物袋と鞄を持った俺は長い廊下を歩く。  俺達二人は、五年前から婆ちゃんの家に住んでいる。 「おかえり光圀(ミツクニ)。教室もう少しで終わるからねぇ」  ミツクニは俺の名前。 婆ちゃんが廊下に顏を出してそう言った。 花の教室をやっていて、生徒さんであるおば様方がちょっとだけ見えた。  この家は代々続く日本家屋ってやつで、庭とかも広くて――蔵とかあって。 俺達三人では広すぎる家で。 「シオリ、降りて」  はーい、とシオリは降りると、毎日の習慣であるそこに座った。 俺も荷物を置いてシオリの隣に座る。
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