序章

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今は春の始めだ。学校から、少し離れた通学路には長い桜のトンネルが出来ている。遠回りしてでもここを通りたい。 桜は満開でも散り際でも美しい。舞い落ちる花びらを見ながら、日本人だなぁってつくづく思う。 「咲良(さくら)ぼうっとしていると遅刻するよ」 振り向くと明るい茶色のショートボブ、垂れ目で優しい顔立ちの柑菜(かんな)が居た。 「この時期は遅刻しても桜見たいんだもん」 頬が自然に膨らんでいる。柑菜だって、わざわざ遠回りしてこの道を選んで通学しているじゃないか。
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