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「も~、まだ何もいってないじゃんか」
「この体勢、人にものを頼む人の態度じゃありませんから!…聞くだけ聞くのはいいですけど3メートルぐらい離れたとこからでお願いします」
「それ会話する距離じゃないよね、キミ逃げる気満々だよね~?」
そりゃあ内容によっては?
しかし寮長さんは俺の上から降りようとする気配はなく、身をよじる俺の肩を抑えてにっこりと微笑む。
細身に見えるのにビクともしないうえに肩を掴む力も案外強くて抜け出せそうになかった。
「だいじょーぶ、この縄で僕を縛ってくれるだけで良いんだよ。カンタンでしょ?」
「ハードモードすぎるよ!!」
「ねえちょっとだけ、ちょっと巻くだけでいいから!減るもんじゃないしいいじゃん~!」
「それ先っぽだけの法則だろ!!むり!むりです!絶対体力も精神力も何もかもゴリゴリ削られますもん!!」
どこから出したのか荒縄の束を持って詰め寄ってくる寮長にもう目から汗が出そうだよ。
必死に遠慮させてもらっているとむくれた顔の寮長は俺の顎に手を添えて上を向かされた。
「じゃあ、チューしちゃうからね」
「え、やだ」
「もおー!全部やだやだって、赤ちゃんでちゅか?何が嫌なんでちゅかー?」
「やだやだうわーん!!!」
俺も自暴自棄になっていた自覚はある。
その瞬間、何の前触れもなく部屋に1つしかない扉が開いた。
もちろん俺も寮長も扉になんて触れていない。
ということは。
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